10 January 2025
カタチが与える印象をビジュアルに落とし込む。田中大吾のコンセプトアート
映画やゲーム、アニメなど、作品の世界観やイメージの土台作りに欠かせないコンセプトアート。文字や言葉だけでは伝わりにくいアイデアをビジュアル化することで、プロジェクト全体の方向性を明確にする、重要な役割を担っています。2022年に入社し、コンセプトアーティストとして活動する田中大吾が、コンセプトアートに対する想いや、制作におけるポリシーなどを語ります。
コンテンツの方向性を導く、コンセプトアート
―はじめに、田中さんが普段担当している業務について教えてください。
コンセプトアートの制作だけでなく、背景やその周りの環境をビジュアル化するエンバイロメントアートの制作も担当しています。以前担当したゲームの案件では、ゲーム内に登場する機械や機材のデザインも手掛けました。多くのオブジェクトを扱う大変な作業でしたが、3DCGスキルを高めることができたと実感しています。
―ここからは、コンセプトアーティストとしての制作について深掘りしていこうと思います。まず、コンセプトアーティストの仕事・役割について教えてください。
コンセプトアートは、エンバイロメントアートやキャラクターデザインなど細分化されているのですが、一貫して変わらないのが「作品やコンテンツの基盤となるアイデアを視覚化する」ということです。監督の考えを汲み取り、ビジュアルに落とし込む。そこから作品の方向性が決まることも多いので、制作初期段階に欠かせない仕事だと考えています。
―考えやアイデアをビジュアルに落とし込んでいく作業は容易ではないと思います。田中さんが、制作過程で特に大切にしていることは何ですか?
綿密に意見交換し、齟齬をなくしていくことが何より重要だと思います。そのうえで、自分なりのアイデアがあれば積極的に提案するようにしています。よりよい提案につなげるためにも、資料を読み込んだり、アーティスト向けの投稿サイトを巡ったり、海外のコンセプトアーティストによるチュートリアルを見たりと、日々の勉強を通して自分の引き出しを広げています。
―田中さんがコンセプトアートを描くうえで、意識していることや工夫しているポイントはありますか?
「シェイプランゲージ」、ですね。シェイプランゲージとは、簡単に言えば、形が与える心理的な印象のことです。例えば、三角形には「攻撃的」な印象、曲線や円形からは「優しい」「柔らかい」といった印象を受け取る人が多いですよね。こうしたシェイプランゲージの考え方をコンセプトアートに取り入れることで、世界観や雰囲気を直感的に伝えられるよう心掛けています。
形は無限に組み合わせることができるので、「この形とこの形を組み合わせたら、どんな印象を与えられるのだろう」と、Photoshopのシェイプツールを使いながら自分なりに日々探求を続けています。面白い形が出来上がればストックしておき、必要に応じて案件や自主制作に取り入れたりもしています。
オリジナル作品「未知の惑星」シリーズ
―田中さんが精力的に取り組んでいる、自主制作についても聞いてみたいと思います。どのような作品をつくっているのでしょうか。
僕はSFが好きなので、SF的要素を入れ込んだ作品を作ることが多いです。「未知の惑星」というシリーズは、未知の惑星における異星人の文化を描いてみよう、という思いから生まれました。
制作は、ストーリーやアイデアを固めた上でラフを起こし、そこから3DCGで制作、Photoshopでの加筆、というフローで進めました。はじめは2Dで進めるか3Dで進めるかを迷ったのですが、実際の案件ではアイデア出しにスピード感が求められることが多いため、作業の効率化を図るためにも3Dで制作することが増えました。
―このシリーズに込めたコンセプトやストーリーは?
宇宙船で未知の惑星に降り立った主人公が、目のような遺物を見つけるとこから始まります。この遺物は天から伸びる鎖につながっているのですが、鎖をたどっていくと、天界に存在する大きな遺跡の残骸であることが明らかになる。そうしたイメージで描いています。1本のゲームを作るつもりで挑んだので、もっと細かい設定はあるんですけどね。
この連作を制作する際にも、シェイプランゲージを意識してます。例えば、遺跡には「厳格さ」や「正義」を印象づける四角いモチーフを入れていますが、ところどころに、うねうねとした曲線も取り入れています。そうすることで、現実の遺跡では見たことのない、少し異質な雰囲気を感じてもらえるのではないかと考えました。形の組み合わせによって生まれる印象を、意図的に作品に取り入れることができたと感じています。
挑戦を重ね、広がる未来のビジョン
―最後に、今後の展望を教えてください。
コンセプトアーティストとして成長することはもちろんですが、さまざまな分野にチャレンジしていきたいと考えています。現在も、制作したコンセプトアートをゲームエンジンに取り込んで映像にするチャレンジをおこなっています。自分のできることが増えれば、表現の幅をさらに広げられると信じています。
MEMBER
INTERNAL
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CONCEPT ARTIST
DAIGO TANAKA