17 September 2025

千葉祐吾が導く、空間演出×地域創生の新たな可能性

地域創生が、社会の大きな課題となっている昨今。各地で、観光客誘致のための施策が打たれています。なかでも、地域の魅力を散りばめた空間演出 は、flapper3が得意とするところ。グランドデザインから、設計、施工・運用までを協力会社と連携して取り組んでいます。

今回ご紹介するのは、岩手県の地域創生を軸とする2つの案件。空間演出を手掛けたプロデューサーの千葉祐吾が、盛岡つなぎ温泉のホテル紫苑で行われているイベント「NIGHT ARTS GARDEN」と、鶯宿温泉の竹あかりの宿 加賀助を起点に広がる鶯宿温泉のプロジェクトを振り返ります。

宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の世界観を、幻想的な光と音で表現「HOTEL SHION NIGHT ARTS GARDEN」

―「HOTEL SHION NIGHT ARTS GARDEN」の概要を教えてください。

岩手県つなぎ温泉にあるホテル紫苑の庭園で、2024年8月から開催している夕刻~夜間限定のイベントです。岩手県を代表する詩人・童話作家である宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の世界観をイメージし、光と音の表現を組み合わせて幻想的な空間を楽しんでもらおうという趣旨で空間をデザインしました。

「銀河鉄道を降りたら、こんな世界が広がっていた」という世界観を表現するために、40m×50mほどのスペースに約100本のLEDライトを点灯させ、音楽や効果音とともに幻想的なインスタレーション空間に仕上げています。

1時間に1回、約10分間のショータイムも行っています。32ドットのLEDライトを100本分制御。ライト1本1本の光り方は音と連動させ、動きのある立体的な演出にチャレンジしています。

光の中に入って歩いたとき、ホテルのロビーから全体の動きを俯瞰して見たとき。それぞれの見え方の違いまで考慮して設計したので、いろいろな場所から楽しんでほしいと思います。

―このコンテンツは、企画、システムなど含めて、社内のチームでディレクションされたそうですね。

はい。だからこそ、「flapper3ならではの空間演出とは?」ということは強く意識しました。flapper3はVJ出身者が多く、普段はライブ映像も数多く担当しています。今回は、ホテルの庭園という特別な空間で、音と光の調和を意識して制作するとどのようなものができるのか。照明専門会社ではなく、映像制作会社がつくる照明とは? その一つの答えが出せた案件だったと思っています。

―制作中にあった、印象的なエピソードを教えてください。

この案件は、flapper3のメンバーだけではなく、多くの方と一緒につくり上げたもの。 地域の方々に協力していただいたことが、特に印象に残っています。自分が岩手県出身ということもあり、実は、同級生の息子さんにも工事を手伝ってもらったんです(笑)。とにかく、約100本のLEDライトを立てるのが大変でしたね。なだらかな斜面が続く地面に、膨大の量のライトをまっすぐ配置するのがいかに難しいかを思い知らされました。

また、地面に刺すための板金の部分の設計にも工夫が必要でした。地質に合わせて板金の部材を選び、長さを考え……さまざまな側面を考慮した上でデザインする必要があったので、flapper3のディレクター横山、テクニカルディレクターの猪股らと一緒にチームで連携し、トライ&エラーを繰り返しながら決めていきました。

その甲斐あって、「普段は訪れることのなかった庭園に足を運ぶきっかけになった」という声をいただいたり、大人だけでなく子どもたちも「とても綺麗!」とすごくはしゃいでいたり。地域の方や観光で訪れた方々も一緒に楽しめる仕掛けをつくれたことが、とても意義のあることだと感じました。

竹あかりをテーマにした四季を彩る光の演出「加賀助」

―鶯宿温泉のホテル「加賀助」の空間デザインも担当されていますね。

岩手県の鶯宿エリアにあるホテルのリニューアルを機に、まず、エントランスを一新しました。

コンセプトは、「癒しと物語性」。もともと鶯宿エリアは、「うぐいすの宿」としても知られる地域です。調べていくと、昔話の「かぐや姫」に、うぐいすの卵から生まれたという解釈があることを知り、「かぐや姫」の物語をテーマにしようと考えました。

エントランス入ってすぐに目にする壁面には、穴の空いた竹の中にライトを仕込んで並べました。穴から漏れるオレンジのやわらかい竹あかりが「かぐや姫」の幻想的な世界観を演出してくれていると思います。

ライトの設置は、地元の建設企業である伊藤建設の職人さんと一緒に行いました。長さや太さの違う竹あかりを、現地でカットしながらレイアウトデザインを調整。ドキドキしながら作業したのですが、想定通りの感じにまとめることができたので、ほっとしています。

フロントは、CGでつくったイメージをもとに、職人さんが細部まで丁寧に仕上げてくれました。

ソファやイス、本棚に並べてある本は、今回のプロジェクトに合わせてディレクショ ンしています 。また、ガラスのテーブルも、職人さんにつくっていただきました。

エントランスのリニューアルに続き、ホテル入口へと続く橋にも竹あかりを設置しました。「営業する宿が減っている鶯宿温泉に、加賀助をきっかけにもう一度あかりを灯せたら」という地域の思いを大切にしながら、内観から橋へ、そしてゆくゆくは街全体をやさしいあかりで包めたらと思っています。

地域の特性をテーマに据え、多くの人を巻き込むためのグランドデザイン

―地域創生につながる案件を担当するにあたり、どんなことを心掛けていますか。

エリアのブランディングをするにあたり、クリエイティブなアプローチでどのような発信ができるのかを意識しています。どの地域にも魅力があるのに、地元の人はその魅力に気づいていないケースはとても多いんですよね。


そうした、まだ表に出ていない地域の魅力をクリエイティブの力でちりばめて、来訪者が自分で発見できるような仕掛けをつくりたいと考えています。

そのためには、地域の特性に寄り添う、説得力のあるグランドデザインが欠かせません。今回ご紹介した案件のグランドデザインのベースになったのは、「宮沢賢治」と「かぐや姫」。この二つを軸に、「人が、その地域に行く理由」を掘り起こし、空間デザインに落とし込むことを心掛けています。

―では、最後に今後の展望を教えてください。

今回ご紹介した案件は、どちらも今後バージョンアップしていく予定があります。例えば、「加賀助」はエントランス以外の内観と並行して、地域全体にもさまざまなアプローチで竹あかりを灯していければと思っています。

flapper3はこれからも多くの方々と協力し、新たな体験を提供する空間演出に幅広く取り組んでいきます。

MEMBER

INTERNAL

  • PRODUCER

    YUGO CHIBA

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