26 January 2024

VJの視点で追求し続ける、音楽×映像によるflapper3の空間演出

そもそもVJ(ビジュアルジョッキー・ビデオジョッキー)とは、音楽に合わせてリアルタイムに映像を映し出し、クラブやライブなどの空間を演出する人たちのことを指します。あらかじめ用意した映像をその場でミキシングしたり、即興でドローイングを行いその様子を映し出したり、ジェネレーター系ソフトを用いてその場で映像を生成したりと、その手法は多種多様です 。

今回は、そんなVJというバックグラウンドを持った5人のメンバーが、VJの映像制作において心がけていることやVJの経験が生きる空間演出などについて語り合います。

音楽と会場との一体感を追求する、VJという役割

―個人で精力的にVJをしているみなさんですが、VJの活動や制作をする上で意識していることはありますか?

矢向:「会場に映し出されたときに、流れている音楽がかっこよく感じるかどうか」。これがいいVJ映像制作の基準だと思っています。映像作家が動画共有サイトにアップしている映像は、単体で見てもかっこいいのですが、VJの映像は単体で見るとダサいと感じるものも多いんです。でも、それが音楽やフロアの空間と合わさった時に、大きな効果を発揮する。その感覚は、VJの経験がなければなかなか認識できないのではないかと思っています。

横山:たしかにそうですね。VJで使うような、単色が点滅しているだけの映像をYouTubeで見てもつまらないけど、会場のLEDモニターで見るとものすごくかっこよく見えたりするんですよね。そうした現場での見え方は意識しています。

堀井:しかも、基本的にVJの映像が流れる画面って大きいですから。映像をパソコンの中で見るのとは見え方が違うんですよね。

佐藤:僕もその感覚は大事にしています。もともと、自分の映像作品のアウトプットの場としてVJを始めたのですが、クラブでVJをしていると「こういう映像がこの場で流れると、空間はこういうふうに見えるんだ」とわかるようになってくるんです。映像でリアルタイムに空間を演出するVJの感覚値は、ライブやイベントの映像作りにも生きていると思います。

―VJの仕事は音楽ありきだと思いますが、音楽に対してはどのようにアプローチしているのでしょうか。

矢向:音楽を読むのもVJの仕事ですからね。音楽の流れを読み取って、次にくるだろうなと予測しながら映像をミキシングしています。VJ用の映像も、音楽構造を考えながら制作しています。POPSやEDMなど、音楽にはジャンルごとにある程度決まった流れがありますよね。なんとなくですが、「この部分にこの映像がよさそうだな」というのが自分の中で体現化できていると思います。

佐藤:「最後のサビに向かって、こういう映像構成にしようという!」というような考え方も、音楽が好きで、現場を経験しているからこそわかる感覚なのかなと。

山本:VJの映像だけでなく、MVやライブ映像制作にも同じことが言えるのですが、僕は「音楽のイメージをブーストさせる」ことを大切にしています。そのために音楽に寄り添った映像をつくることはもちろん、あえて異なる印象の映像をぶつけて想像力を搔き立てるような演出をすることもあります。どちらからもアプローチできますが、「音楽を加速させる」という点では変わらないはずです。

ASOBINOTES ONLINE FES
ASOBINOTES ONLINE FES
ASOBINOTES ONLINE FES
ASOBINOTES ONLINE FES

配信イベントから特殊なLEDモニターを設置したライブステージまで。flapper3が振り返るVJ活動

矢向:バンダイナムコエンターテインメント主宰のオンラインイベント「ASOBINOTES ONLINE FES」では、メインフロアのVJを3人で担当しました。普段はその場の雰囲気や観客の盛り上がりも含めて明るさを調整したり、どの映像を出すのか判断したりしているのですが、このイベントは配信でしたのでそれができないのが難しかったですね。

横山:普通ならフロア全体の照明も見ながら調整していくのに、その時はステージ照明だけ。どう見えているかは把握しづらかったですよね。

矢向:そうでしたね。でも、配信の様子がわかる専用モニターを用意してもらったのを覚えています。現場で「空間全体がどうかっこよく見えるのか」を考えながらVJするのとは大分違うのですが、配信用のカメラで一部分だけを切り抜かれてもかっこよく見えるVJをしようと心がけていました。

山本:色々なジャンルのDJが登場するイベントだったので、自分が普段あまりやらないようなジャンルの音楽のVJをすることもありましたね。その難しさもありましたが、思い出に残る案件です。

RedBull Music Festival Tokyo 2017
RedBull Music Festival Tokyo 2017

矢向:「RedBull Music Festival Tokyo 2017」という音楽フェスティバルの一環で行われたライブイベント「SOUND JUNCTION 渋谷音楽交差点」も印象に残っています。フロアの4隅にそれぞれステージがあり、4組のアーティストがリレー形式でライブを行うというイベントで、VJを担当しました。

横山:天井に長方形の細長いLEDディスプレイが12枚並んでいる少し特殊な会場で、映像を映すというより「照明」でしたよね。

矢向:そもそもLEDを光や照明として使うことも多いんです。この案件でも、照明としての効果を意識した映像演出を狙いました。

山本: レッドブルの赤や青を基調として、LEDが一直線に並んでいるレイアウトを生かして、光のラインが走るような映像を取り入れるなど、空間全体を演出する映像制作を心がけて取り組んだイベントでした。

ECO EDO日本橋
東京国際クルーズターミナル

幅広いコンテンツ制作に生きる、VJの現場で培われた空間演出力

―ライブや音楽系イベント以外の案件を担当する上で、「VJの経験が生きている」と感じることはありますか?

山本:VJはやはり現場ありきの活動なので、「現場で映像がどう見えるか」という想像力は養われていると思います。特に、明るさの感覚値。例えば、演出を担当した「ECO EDO日本橋 2019」 は野外のイベントでしたので、VJの経験則で「この時間帯ならこういう見え方になるだろう」と、想像することができました。

堀井:たしかに、「現場をよく知っている」というのは大きいですよね。VJは、現場を見て映像の明るさをその場で変更したり、コントラストを強めて見せ方を調整したりと、作った映像をそのまま使わないことも多いです。その感覚は、映像を作って納品するだけでは培われないと思うんですよね。リアルタイムに、その空間での一番いい見せ方を提案できるのは強みだと思います。

矢向:あと、VJの「その空間のシチュエーションを考える」というスキルは、他の案件でも生きていると思います。「東京国際クルーズターミナル」 の案件では、船を待つフロアで流れる映像を担当したのですが、どういう映像と音楽が流れると、船を待つ人が飽きずに心地よく待てるのかを考えて制作しました。ライブ現場は盛り上がりたい人に向けた演出をするので真逆ではありますが、こうした空間づくりにもVJの活動に通じるものがあると感じています。

―ずばり、flapper3の映像演出における強みとは何だと思いますか?

矢向:やはり、VJの経験を通し、現場の感覚を知っているメンバーが多いというところですね。VJがこんなに在籍している会社ってなかなかありません。映像が現場でどう効果的に見えるかというのも、実際に体感しないとわからないことも多いので、現場で培った感覚値みたいなものを多くのメンバーが有しているというのは、flapper3の資産だと思います。

SiM XR LiVE
SiM XR LiVE
SiM XR LiVE
SiM XR LiVE

VJの映像づくりを軸に広がっていく
非日常を届けるflapper3のコンテンツ

―最後に、みなさんが今後注力したいことを教えてください。

山本:個人的には、バーチャルプロダクションを掘り下げてみたいですね。初めて担当したのが「SiM XR LiVE」 だったのですが、映像で空間を演出するというVJ活動の延長線上にある案件だったと感じています。今後も積極的に関わっていけたら嬉しいです。

佐藤:僕は引き続き、音楽を軸としたコンテンツ作りを続けていきたいです。VJには、音楽という制約に対し、どういう映像、どういう体験を付随させていくかを考えて演出を考えていく役割がありますが、それが謎解きみたいで面白いなと思っています。観客のリアクションで自分の演出がどうだったのか、答え合わせもできますしね。VJの活動経験をライブ映像やライブ演出、バーチャルプロダクションの制作などにも生かしていきたいです。

横山:僕も、制約がある中での制作に燃えるタイプです(笑)。普段もコンテンツのOP映像などを担当することが多いのですが、これからもその時、その場所で光る制作物を生み出していけたらいいなと思っています。

堀井:僕はもっと照明の勉強をして、ステージ全体の総合演出ができたら面白そうだなと思っています。基本的にライブやクラブの現場には照明さんがいて、お互いを意識ながら空間を作っていくのですが、大きなイベントを見ると照明とVJの映像が一体となった演出をしているステージも多いんです。flapper3にはテックチームもいますし、そうした照明までを組み込んだステージ演出にも挑戦したいですね。

矢向:僕は、アーティストやコンテンツ、キャラクターをどう見せるか、どうよりよく見えるようにすればいいかを考える方が昔から好きなので、それをずっと続けたいなと思います。VJ活動を始めた17歳のころからずっと変わってないのは「非日常体験をつくりたい」という想いです。クラブで非日常をつくるのがVJの仕事。だからこそ、バーチャルプロダクションでもXRライブでも、非日常のエンタメを届けたいという想いは、今後も変わらず加速させていきたいと思っています。

MEMBER

INTERNAL

  • CREATIVE DIRECTOR

    NAOHIRO YAKO

  • ART DIRECTOR

    TAIYO YAMAMOTO

  • DIRECTOR

    NAOTO YOKOYAMA

  • TECHNICAL DIRECTOR

    KENTARO HORII

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